Uppsala Diary

スウェーデンへの留学を機にブログを開設。帰国後もたまに綴っています。好きなものはチャイコフスキーの弦楽セレナーデと新印象派。

スウェーデンの就学前学校について

春学期ついに初更新です。

5月の1ヶ月間、ウプサラの就学前学校でボランティアをさせてもらっていました。

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基本的に就学前学校はスウェーデン語が使われますが

ここではイギリス出身の先生がいらっしゃって、英語も話す子向けのクラスも一つあり、わたしは主にそこで活動させてもらいました。

この活動についてもまた書きたいと思っていますが、今日その先生にインタビューさせてもらったので、それについてまず書き留めておこうと思います。

 

【目的】

①日本が直面している課題(保育士の長時間労働・低賃金→保育士不足)についてスウェーデンの現状と対応策を聞く

②人が親になるサポートとしてどのようなことをしているのか、事例を集める

 

【結論ざっくり言うと】

スウェーデンも同じようにかなりの就学前学校教諭の不足という問題を抱えています。

理由は給料が他の職業に比べて低いこと、精神的にハードな仕事であることが挙げられます。

そのために賃上げ交渉を行ったりはしているそうですが、なかなか変わる動きは見られません。

親に対しては

スウェーデンのカリキュラムを紹介する

②半期に1回の面談

③毎月の通信, HPの更新

などが主に行っていることです。 

 

【話した内容】

*労働時間について

スウェーデンでは保育士に限らずパーセンテージで選ぶことができます。

今回聞いた方は現在85%で勤務。

100%が週40時間なので、85%だと34時間働くことになります。

この就学前学校の先生の中でもフルタイムで働いているのは2人だけみたいです。

 

*賃金について

月給は税金をとられる前で29500kr、日本円で35万くらいです。

他の仕事に比べたら低いです。

たとえばエンジニアは40000kr、日本円で50万超えです

大学時代に勉強しなければならない期間は同じ4年間なのに

ここに差が生まれてきてしまう

 

*残業について

イベントの準備なども基本的には労働時間内に行うように計画を立てます。

だいたい月に5~10時間くらいあるけど、それもお給料がもらえます。

 

*大変なこと

先生が病気で休んでしまうことを一番に挙げていました。

そのために2,3人は急遽行けるように備えているみたいです。

一時的に補助として先生が来てくれることは必要な一方で、

ここで何をどうするか、あまり知らなかったり

子どももシャイだからなかなかいつも通りに行かず、難しいみたいです。

 

*先生不足について

就学前学校の先生を目指して大学でそのためのコースをとる人の中でも

いざ実習に出たタイミングで座学と現場のギャップに衝撃を受け

進路変更してしまうことも少なくないそうです。

たとえばここの就学前学校も全員正式な就学前学校の先生ではなくて、基礎学校の先生だったりチャイルドマインダーの資格を持っている人が先生として働いているそう。

たしかに足りていないからそうするしかないけれど

・大学のコースで学ぶはずの理論や方法論を知らない/十分ではない

・先生の募集枠はたくさんあいている状態であるため、何か気に入らないことがあるとすぐに職場を変えることができてしまうが、それは子どもにとって良くない

というのが問題点としてあります。

 

*現状を変えるためにしていること

衝突を避け、話し合いからの合意形成を好むスウェーデン

労働組合の力が強いのですが

例にもれず就学前学校の先生も組合から給料をあげるよう政府に要請しているらしいです。

(ちなみに組合に加盟すると最低限の賃金は保証してくれたりするらしい)

ただなかなか聞き入れられないみたいです。

大きな責任を背負って働いているけれど、政府はあまり子育てを重要視していないと話していて、

『本で読んだときは "子どもは社会で育てるもの" という意識が政府にもある印象を受けたのに…』

と驚きを隠せませんでした。

 

*他の国の状況について

保育士として働くという点で一番いい国はデンマークだと彼女は言っていました。

お給料も月に50000krで、クラスの規模ももっと小さく、休みも多い。

知らなかった。

一方イギリスはまた全然違って、

・私立が多い

・3歳からしか預けられない(それまでは母が家に留まるか、親戚を頼ったりする)

・childcare serviceはスウェーデンだと月に1140kr(15000円くらい)ですが、イギリスではこれが週ごとにかかる感じ

らしいです。

 

*親への教育について

先ほど保育士志望の人も実習に来て進路変更をしてしまうという話がありましたが、「思ってたのと違う!」ってなるのって親も一緒だろうなと思うんです。

そういう不安、衝撃を受けながら

人はどうやって "親" になっていくのだろうかと気になっていました。

ここでやっていることとしては

スウェーデンのカリキュラムを紹介する

関心の強い保護者の方には実際にカリキュラムを見せているそうです。

ネット上で見ることもできるからそれを紹介したり。

②半期に1回の面談

ただ保護者の中でも「忙しいから」と応じてくれなかったり、子どもに興味を示さない場合もあるそうです。

③毎月の通信, HPの更新

就学前学校での様子・学んだことなどを伝えるものを作っているそうです。

後は送り迎えのときに、様子について話すと同時に

相談に乗ったりすることもあるそうです。

 

スウェーデンは女性の社会進出自体は進んでいますが、それは子育ての時間を確保するのではなく、できるだけ社会のリソースに預けて働くというスタイルです。

その分親を巻き込んでいく努力は必要不可欠なものになっているし、難しいことでもあります。

人が親になる過程を紐解きたい。

 

そしてやはり疑問なのは、

子どもを育てるということは、未来をつくる一端を担っているのに

なぜこんなに認められないんだろうということ。

市場から考えるとこんな非合理的で扱いにくいものはないかもしれない。

ですが、やはり子どもを育てるという行為の中に

何か人間として大事なものが隠れている気がしてなりません。

(全員が子どもを持つべきだ、という話がしたい訳では決してありません。

いろんな形で子どもと関わることはきっとプラスになるはずという気がするのと

不安だけ見えてその道を避けてしまう社会はいやだなあと思っているという感じです)