Uppsala Diary

スウェーデンへの留学を機にブログを開設。帰国後もたまに綴っています。好きなものはチャイコフスキーの弦楽セレナーデと新印象派。

大学教授から見た日本とスウェーデンの教育事情

今日は友人の伝手でウプサラ大学教育学部の学部長方と日本女子大学の教授の方との打ち合わせに同席させていただきました。

(前日にダメ元でお願いしてもらったのにOKもらえて、先生にも友達にも感謝感謝です…!)

両国の教育事情について話をした後にどういう形で協力できるか、みたいな話でとても勉強になったので書き残しておきます。

 

(ⅰ)スウェーデンの教育事情

スウェーデン国内で政治的に注目を集めているらしいのですが、課題を4点聞きました。

  • 教師の数の減少

スウェーデン国内の人口は主に移民の影響で増えているにも関わらず

教師を希望する人が減っているそう。

5年間で6万人を養成するという方針が出ているそうで、教員養成のプログラムを変えることが必要だとおっしゃっていました

  • 学力の低下

OECDが行っているPISA(Programme for International Student Assessment)では10~15年前と比べてスウェーデンの順位が落ちてきているそう。

2003年から2012年の変化を調べるとたしかに…

数学リテラシー全体 17位 → 38位

読解力全体      8位  → 36位

科学リテラシー全体 15位 → 38位

(参考:

PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査:文部科学省

http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/pisa2012_result_outline.pdf)

特に数学やreading skillの点でとおっしゃっていましたがこれは移民の影響も大きそう。

ただ、民主主義の元に生きる市民としての批判的思考や問題解決型の思考などは強いそうです。(どうやって強いって測ってるんだろう?)

clitical thinkingとknowledgeは両方の視点が大事で、

knowledgeがなければ適切な批判はできないとおっしゃっていました。

(第2次世界大戦後にはdemocracyが教育においても強調されるようになったそうですが、具体的にどういう形でそれが現れていたのか、日本の政治教育に活かせないか見てみたい)

  • 自治体ごとの教育の質の差

1990年代の学校制度改革によって、それまでは国が全ての教職員を雇用していたところを自治体が責任を持つようになったそうです。

その後民営化されたような形で私立の学校も増えたそう。

この改革の良い点は

✔︎いろんな種類の学校ができたこと

Internationalだったりscienceに特化したものだったり…

反対に悪い点は

✔︎教育の質のコントロールがうまくいかなくなったこと

ほとんどの地域ではよい影響だそうですが、中にはキルナやマルメといった地方において教育の質が低くなってしまっている例もあるそうです。

上述のランキングで下がった要因でもありそう。

自治体に責任を持たせる場合は、その自治体がどこまで教育にお金をかけるのかということが論点になります。

すべての人に同じ機会を与えることが重要なはずなのにそれができていない。

(「行き着くのは民主主義。どこにそれを求めるか」ってメモってたけどなんのことだっけ…解決したら追記しておきます。)

  • 教師の地位の低さ

これはスウェーデンだけではなくドイツやアメリカにいる教授のご友人もおっしゃってることだそうです。

これによって最初に述べた教員のrecruitingも難しくなっています。

5年前に比べれば上がってきているそうですが、給料が低い(もしくは労働時間に見合っていない)などの印象から、これが問題になっているそうです。

 

(ⅱ)日本の教育事情

次に日本についてのお話を聞きました。こちらも課題について(あくまで先生方の考えです)

  • 労働時間の長さ

OECD各国の中でも日本は1番長いんですよね。

f:id:yufrulin:20160903044031p:plain

f:id:yufrulin:20160903044004p:plain

(2013年のOECD国際指導教員環境調査より)

私の母は小学校教諭なのですが、たしかに生徒が帰ってからも会議が続き、自分の仕事に取りかかれるのはかなり遅い時間で、家に帰ってからも仕事をしていました。

  • 公的教育費が低い

これは今年の前期にとっていた演習でずっと取り組んでいたテーマだったのでビビッときました(笑)

日本は教育費に関しては個人負担が大きく、それが当たり前になっています。

そのために貧富の連鎖にもつながっていたり…

日本政府は去年今年あたりから考え始めたらしいです。

 

あと理科の先生だった方がおっしゃっていたのは、

日本の環境と自然に関する教育はかけ離れているがスウェーデンのそれは日常生活に密着したもので素晴らしいと思った、ということでした。

 

(ⅲ)まとめ 

スウェーデンジェンダー教育・特別支援教育・多文化教育の点で日本は学べるところがありそう。

教育学部に留学してる訳ではないけど、そういうところをもうちょっとフォーカスして教授に話を聞いたり、現場を見てみたい!と思ったのでまたアンテナ張ります。

 

  • 公教育の担うべき役割って?

日本がPISAで上位なのは国語と算数にすごく時間をかけているからで、

反対に社会や理科、democracyにつながるような批判的思考を伸ばす時間などは少ないらしい。(どっかから根拠持ってきたい…)

また、程度の差はあれ障碍を持った人たちであったり

様々なBackgroundを持った人の中で育つことが日本はあまりないと感じ

インクルーシブ教育だったりひとりひとりに合わせた教育をしたほうがいいのではないか、と個人的には思っていました。

しかし現状の労働時間を見てみるとここに加えるのはほぼ困難な気がします。

(ただ労働時間が長い原因の一つには、そういうひとりひとりのケアをしようとしてできていなくて大変、みたいなのもあったりするのかな?と思うので、そこに注力して解決できるならプラマイ0程度にはなるかも?)

 

ここで公教育で伝えるべき大切なこと・担うべき役割ってなんなんだろうって考えてみたいのですが、わたしが今考えたものとしては

・人が自立して生きていけるようにすること

・次の世代へつなげていくこと

です。その中で分けるとすると

*自立

・就学前の非認知能力重視

・全体的に世界を広げられるような経験 (留学や就業経験 etc...)

・多様性の中で生きていくこと

*次の世代へ

・子どもや人を育てること

・国を動かしていくこと

・歴史

についての知識とか経験が重要ではないかって思ったりします。

あんまり深く考えれてないし、多分今日本とかこれまでの私が受けてきた教育に足りないものに特に重点置かれてる気がするからその前提で見て欲しいですが…^^;

 

これまで教育だけにばーーーって考えを深めたことがなかったのでまだまだ甘いかもしれないし、根拠も集めきれてないけど

完璧を求めすぎると公開できるのがだいぶ先になりそうだし、個人のブログだしということでこの辺で今日は終わりにします!

人に見せる書き物は難しいですね…精進します…!